テニスで腰が痛くなった経験はありませんか?
私の父はあります。
父は腰痛持ちで、テニスは腰への負担が大きく楽しくプレーできないそう。
また、高校の時のキャプテンも腰痛を患っていたため、
テニスと腰痛は切っても切れない関係なのかと…。
でも、みなさん全力でテニスを楽しみたいですよね?
今回はなんと
理学療法士の人に腰の痛みの原因と正しい対処法について記事を書いてもらいました!
今回の記事では、テニスにおける腰の痛みの種類や対策(ストレッチ含む)、治療法などについて触れていきます。
すでに腰が痛む人、これから腰を痛めたくない人の参考になればうれしいです。
本記事でわかること!
- 腰の怪我の種類
- 腰の怪我の症状
- 腰の痛みの原因
- 症状のチェック方法
- 腰の怪我の治療法
- 腰を痛めないための対策
目次
はじめに
テニスをしていると、どうしても避けて通れないのが体を捻る動きです。
体をたくさん捻ったり動かしたりすると、気になってくるのが腰の痛みです。
今回の記事では、テニスで生じる腰部の痛みについて、起こりやすい疾患の症状や原因、治療法などについて触れていきます。
そもそも腰を痛めるとは?
腰が痛いと言っても、腰の何が痛いのかによって、対策は変わってきます。
腰といっても、色々な物で構成されています。
腰の筋肉が痛いのか、腰の関節が痛いのか、椎間板が痛いのか、はたまた内臓が悪いのか。腰痛といっても原因は多岐に渡ります。
テニスで腰を痛めた時に診断される病名として、筋・筋膜性腰痛、腰椎分離症、腰椎椎間板ヘルニアがあります。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
筋・筋膜性腰痛
筋膜性腰痛とはいわゆる腰痛です。腰痛の8割は、この「筋・筋膜性腰痛」と言われています。
大体レントゲンを撮影して骨に異常が無いこと、MRIを撮影してヘルニアや神経の圧迫、骨折がないこと、内臓に異常が無いこと、これらが確認されると、筋・筋膜性腰痛と診断されることが多いです。
症状
主な症状は、腰の筋肉の痛みです。
原因は筋肉なので、神経的な症状が無いことが特徴です。
足に痺れが出たり、特定の足の筋肉が筋力低下したり、感覚障害が起きたりすると、ヘルニアなど神経を圧迫する疾患が考えられます。
原因
筋・筋膜性腰痛の原因は、腰の筋肉の硬さや血流の悪さです。血流の悪さと腰痛の関係について述べた論文によると
痛みが出るプロセスは下記のように説明されています。
- 筋肉が硬くなると毛細血管が圧迫される。
- 毛細血管が圧迫された結果、血流が悪くなる。
- 血流が悪くなるとブラジキニン、プロスタグランジンという痛みに関与する物質が放出される。
- 痛みを感じ取るセンサーが、ますます興奮状態に陥る。
- 痛みを感じやすくなる体になる。
【参考文献】
筋・筋膜性腰痛に対する運動療法の効果・検証
治療法
画像などで明らかな病変を認めないため、痛み止めや湿布、リハビリなどが処方されます。
リハビリでは、筋肉のストレッチや姿勢の修正、筋力強化を行って腰痛が出にくい体づくりをしていきます。
では筋・筋膜性腰痛を抱える方はどのような部位を筋トレしていけば良いのでしょうか?
かなり個別性が高い内容にはなりますが、一般的に論文で語られていることを紹介してきます。
お尻の筋力強化
腰痛を抱えている人はお尻の筋肉を鍛えることが重要です。
腰痛を抱えている人は、多裂筋(たれつきん)と大臀筋(だいでんきん)が活動しにくくなってる傾向にあります。
腰痛が無い人と、腰痛がある人の筋肉の使い方の差を見た論文によると、多裂筋と大臀筋の活動を高めることによって、動作時に腰にかかる負担を減らせると示唆されています。
フォームを修正する前後でのお尻の筋肉の活動を調べた論文でも、フォームを修正したあとは、お尻の筋肉の活動が強くなっているという結果になっています。
また、それに伴い、腰痛も改善していると記載されています。
つまり腰痛を抱えている人はお尻の筋肉を鍛えることで、腰の負担を軽減できる可能性がわかります。
【参考文献】
腰痛症者における股関節周囲筋群の筋活動パターン
テニス選手の腰痛に対する一考察:アライメントと筋電図からの検討
ストレッチ
筋・筋膜性腰痛の痛みの原因は、筋肉の血流の悪さであることを述べました。
筋肉の血流の悪さを改善するためには、ストレッチを用いることが有効です。
ストレッチによる血流改善の効果、筋肉別のストレッチ強度による血流の変化について検証した論文によると
筋や部位にもよるが、動かせる最大角度まで動かさなくても、血流は改善できる。
具体的には、痛みを感じない程度までのストレッチでも良い。
この論文から、腰の筋肉の痛みを感じない程度まで、しっかりとストレッチすることによって、腰周りの筋肉の血流を改善することが可能なことがわかります。血流が改善することにより、筋肉の痛みを減少させることが可能です。
また、ストレッチ以外にも、温めて血流を改善させても、痛みが取れる可能性があります。急に出た痛みは温めることは禁止なので、気をつけてください。
【参考文献】
最大位までの多段階ストレッチングが筋の循環に与える影響
筋・筋膜性腰痛の場合のストレッチ
筋・筋膜性腰痛のストレッチのポイントは、筋肉の循環をいかによくするかということがポイントです。
腰の筋肉を伸ばしたり、弱い力で繰り返し使用したりすることによって、血流の循環を促していきます。
また、トレーニングをする際は下記に注意して行ってください。
ストレッチに関する注意
・腰の症状が悪くなる場合は、ストレッチを中止し、医師などに相談してください。
・ストレッチは反動をつけずにじっくりと行ってください。
・足に痺れが出てくる、もしくは痺れが強くなると、神経を圧迫している可能性があります。ストレッチを中止し、医師に相談するようにしてください。
体を捻るストレッチ(弱)
①仰向けに寝て両膝を立てます。この時、背中に空間ができないように、全体を床につけます。
②そのまま足を両側に倒していき、腰を捻ります。
③痛みが出ない範囲で、片側30秒を目安とし、左右へ繰り返します。
体を捻るストレッチ(強)
①仰向けに寝て、図のような姿勢をとります。
②足と反対方向に顔を向けることによって、体全体が捻れてお尻・脇腹・腰・背中・肩甲骨周りなどの筋肉を伸ばすことができます。
③30秒を目安とし、左右へ繰り返します。
股関節のストレッチ(弱)
①仰向けに寝て両膝を立てて、軽く足を開きます。
②そのまま骨盤ができるだけ動かないように、左右へ足を倒します。
③股関節のねじれを意識して行います。
④30秒を目安とし、左右へ繰り返します。
⑤そけい部に痛みが生じる場合は、無理をしない方がいいです。動かす範囲を狭くして行います。
股関節のストレッチ(強)
①図のように片足は伸ばして、反対側の足はあぐらをかくような位置にします。
②そのまま体を前方に倒します。
③お尻の後方を伸ばすことを意識するのがポイントです。
④体が硬くて、イラストのような姿勢がとれない人は、椅子に座って行います。(下記参照)
腰椎分離症
腰椎分離症(ようついぶんりしょう)は成長期の人に好発する腰椎の疲労骨折のことを言います。
腰椎には椎弓という部分があり、そこに負担が集中することにより疲労骨折が発生します。この疲労骨折が発生した状態を、腰椎分離症と言います。
症状
腰椎分離症の症状は、長期にわたる腰痛がメインの症状です。派手な骨折ではないので、レントゲンだけでは発見されないこともあります。
MRIやCTの撮影をして骨の状態を確認すると、ヒビが入っていたり、疲労骨折が発見されたりすることがあります。
原因
椎弓にかかる負担が強いと、疲労骨折が発生します。
骨に負担がかかる状態とは、スポーツ動作時に腰の反り返りが強くなってしまうことや、体の柔軟性が足りずに、腰椎に過度な回旋ストレスがかかることが挙げられます。
腰回りの筋肉の硬さや足の筋肉の硬さ、体幹の筋力の弱さ、肩甲骨周りの硬さなど、選手によって原因は多岐に渡ります。
また、オープンスタンス打法で腰椎の伸展(腰の反り返り)が強くなっていると言う研究結果が出ています。
オープンスタンス打法そのものが悪いわけではありませんが、腰の痛みが出やすい人や、腰椎分離症を経験している人は、オープンスタンス打法はあまり多用しない方が腰への負担も軽減します。
【参考文献】
ジュニアテニス選手のストローク打法の違いによる腰椎および骨盤の運動学的差異
治療法
基本的には、骨をくっつけることが優先になります。
疲労骨折の状態を放置しておくと、「偽関節」といって、骨がくっつかず、関節のようになってしまうことがあります。
このような状態にならないように、コルセットや体幹装具を用いて数ヶ月固定をし、疲労骨折部に負担がかからないようにしていきます。
同時並行で、痛みが出ない範囲でのストレッチや筋力強化など、競技復帰した時に、スムーズに選手として戻れるようにしていきます。
また下記論文によると、4週目までは骨吸収期とされ、たとえ腰椎が動かないように固定をしていても骨折が進行するとしています。
固定2ヶ月目から骨の癒合が開始されることがわかるため、固定期間は少なくとも2ヶ月以上になることが予想できます。
【参考文献】
成長期腰椎分離症の診断と治療
腰椎分離症の場合のストレッチ
腰椎分離症の場合は、腰意外の可動性が低下していることが多いです。
そのため、腰のストレッチというよりも、骨盤の傾きや足の筋肉の硬さ、肩甲骨の可動性の悪さを改善していきます。
また、トレーニングをする際は下記に注意して行ってください。
ストレッチに関する注意
・腰の症状が悪くなる場合は、ストレッチを中止し、医師などに相談してください。
・ストレッチは反動をつけずにじっくりと行ってください。
・足に痺れが出てくる、もしくは痺れが強くなると、神経を圧迫している可能性があります。ストレッチを中止し、医師に相談するようにしてください。
胸椎を伸ばすストレッチ(仰向け)
①仰向けに寝て肩甲骨の下あたりに丸めたバスタオルを入れます。
②骨盤は背中がそりかえらないように、後傾(イラスト参照)させます。
③頭の後ろで手を組み、肘を床につけることによって、胸の筋肉もストレッチされ、胸を張りやすくなります。
④30秒を目安として、複数回休憩を挟みながら行います。
胸椎を伸ばすストレッチ(椅子)
①椅子に座って体の後ろで手を組みます。
②組んだ手を後下方へ伸ばしていきます。
③背中で肩甲骨を寄せて、猫背を伸ばすイメージが重要です。
④30秒を目安とし、複数回繰り返します。
股関節前面のストレッチ
①足を大きく広げて、イラストのような姿勢になります。
②そのまま前に重心を移動していき、後ろ足の股関節前面が伸びることを意識します。
③30秒を目安に左右繰り返します。
大腿前面のストレッチ
①片足だけ正座するようにして床に座ります。
②手で支えながら、後方にゆっくりと倒れていきます。
③ももの前が伸びることを意識しながら、ゆっくりとストレッチします。
④30秒を目安として左右繰り返します。
腰椎椎間板ヘルニア
各腰椎の間には、クッション材となる椎間板(ついかんばん)があります。この椎間板の中には、髄核(ずいかく)と呼ばれる芯のような物があります。
ヘルニアとは、何らかの原因でこの髄核が飛び出てしまい、神経を圧迫してしまう状態を言います。好発部位は、腰椎の下の方だと言われています。
症状
腰の痛みに加えて、神経を圧迫するため、足の痺れや感覚障害、運動麻痺が出ることが特徴です。
ヘルニアになる場所によって、感覚障害が出たり、動きにくい筋肉が出てきたりする場所が違います。
原因
主に若い男性に多く、重労働をしている人に多いとされています。
スポーツ選手にもヘルニアを発症する人はいますが、競技の関連は無いようです。
治療法
ヘルニアの程度が重く、髄核が完全に出てしまっている場合は、体内の細胞が自然と出た部分を分解してくれるので、手術はしない方向で様子を見ることもあります。安静期間は2〜3ヶ月です。
神経の圧迫が強く、尿が出ないなどの症状がある場合は、手術が選択される場合もあります。いずれにしても主治医とよく相談することが大切です。
ヘルニアの部分に関しては以下の文献にまとめられています。
【参考文献】
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改定第2版
腰椎椎間板ヘルニアの場合のストレッチ
ヘルニアの場合は、体を曲げないようにすることがポイントです。
体を曲げてしまうと、余計にヘルニアが出てしまい、悪化してしまう可能性があります。
そのため、腰が反り返るストレッチをしていきます。
また、トレーニングをする際は下記に注意して行ってください。
ストレッチに関する注意
・腰の症状が悪くなる場合は、ストレッチを中止し、医師などに相談してください。
・ストレッチは反動をつけずにじっくりと行ってください。
・足に痺れが出てくる、もしくは痺れが強くなると、神経を圧迫している可能性があります。ストレッチを中止し、医師に相談するようにしてください。
腰を反らすストレッチ
①うつ伏せに寝て、肘で体を支えるような姿勢になります。
②腕の力で上半身を反らします。この時、腰(背筋)に力が入ると痛みが出る場合もありますので、腕立て伏せのように腕の力で上半身を反らせます。
③30秒を目安に繰り返し行います。
④足に痺れが出る、痺れが悪くなるようであれば中止してください。
股関節の可動域の改善
右利きの人は、フォアハンドストロークで、左の股関節(足の付け根)の内旋(女の子座りをする動き)の可動域が重要になります。
股関節の内旋角度と腰椎(腰骨)の伸びが腰痛と関連があると述べている論文では
股関節の可動性や腰椎の可動性を向上させておくことが、腰痛を予防することにつながると記載されています。
【参考文献】
Hip and shoulder internal rotation range of motion deficits in professional tennis players
股関節の可動性が腰に与える影響とは?
ここまで腰に生じる疾患について症状や原因など、詳しく触れてきました。
筋・筋膜性疼痛の部分で、股関節の内旋角度が足りない人は、腰を痛めやすいとされていることを書きました。これらについて考えていきます。
フォアハンドストロークで考えてみると、しっかりと振り抜く時に骨盤も一緒に回ります。表現としては「骨盤が回る」で良いですが、動いているのは股関節です。
股関節が動かなければ骨盤が動かないので、その上の腰椎、もしくは胸椎にて動きを出さなければならなくなります。これが、股関節が硬いと腰に負担がかかると言われている原因です。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回はテニスで生じる腰部の痛みについて書いてきました。
腰の疾患は、一度痛みが出てしまうと改善するのに時間がかかったり、最悪の場合、手術になったりすることもあります。また、腰の負担を軽減するためには、筋力強化をしたり、フォームを変更してみたり、長期間治療を行ってみたり、色々と時間がかかります。
どの疾患を見てみても、ポイントとなるのは、体の柔軟性や筋力がポイントとなっています。全身的に体が柔らかく、筋力があれば、腰への負担を減らすことが可能となります。極論ではありますが、少しずつでも柔軟性や筋力を向上させていくことが重要になります。
また、もし腰に痛みが生じるようなことがあれば、早めに受診をしてください。早期に原因を特定し、早期に治療を開始することにより、競技から離れる時間が少なくなります。
全身のコンディションをしっかりと整えて、腰を痛めることなくテニスをおこなっていきましょう。
テニススタディとは
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